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●人気の企画展:期間来場者数39万人
大英博物館 ミイラと古代エジプト展 Mummy:the inside storyは、2006年10月7日(土)~2007年2月18日(日)の日程で、東京の国立科学博物館において約4ヶ月の期間で開催された。
主催は国立科学博物館、大英博物館、朝日新聞社、テレビ朝日。
この企画展は大英博物館で、2004年7月から1年以上に渡って開催され人気を呼んだ特別展で、世界を巡回して今回日本に初上陸したという。
世界で人気を博したこの展示会は日本でも注目を集めて、開催一ヶ月の11月5日には入場者数の累計が10万人に達し、1月26日に30万人を突破、2月18日の終了までに39万3078人が訪れた。
その人気の理由は何なのかというと、ミイラと古代エジプトという世界的に人気の高いテーマを扱っているからというだけの理由ではないだろう。
●3Dシアターによるバーチャルミイラ体験
今回の展示では3D映像による約3000年前のミイラを見るというのが大きな目玉である。
受付を済ませ立体映像用のめがねを受け取ると展示物を見る前にまず3Dシアターへと誘導される。
この最初に映像を見せるという演出の狙いはミイラや古代エジプトの時代背景に関する基礎知識を映像によって理解した上で実際の展示物を見るというプロセスの方が、より深い理解を得られるという大英博物館のこの企画展における考え方に準じたものであるという。
シアターは幅14メートル高さ4メートルのワイドスクリーンと大型プロジェクター6台、20台以上のサラウンドスピーカーに約400席の客席を備えている。
ここで上映される作品の主人公は、第23王朝時代のエジプト、テーベの神官であったネスペルエンネブウ(前800年ごろ)のミイラである。
そして注目すべき点は、このミイラを解体することなく医療用CTスキャンを使用することによって内部のデータを取得し、その結果を立体CGによりリアルに映像コンテンツとして再現したということ。
この立体映像コンテンツは英国SGI および米国SGI のエンジニアが大英博物館の専門チームと共同で制作したもので、同社が誇るハイクオリティなコンピュータ・グラフィックス(CG)技術をもとに制作された。さらに日本での公開には日本SGIが技術協力し、日本語版コンテンツの制作支援と大型3Dシアターの構築、運用を行っている。
医療用CTスキャンでミイラの頭から足先まで1ミリ間隔で断層撮影した画像を、コンピューター技術で3D処理し、骨格や体内に残った臓器や護符などといったミイラの内部のパーツを隅々までを立体映像で再現した。なんとミイラの頭骸骨に開いた穴(脳腫瘍のためか?)や歯の腫瘍の痕跡なども見事に明らかにされている。さらに医学的な所見から死亡時の年齢までも推定しているのだ。
またミイラの棺が目の前に飛び出してくるようなバーチャルリアリティ独特の映像表現も駆使し、実写映像とCGを合成し3D効果を随所に取り入れて飽きさせない演出は、これを目当てにきた来場客の期待に充分に応えるものであった。
きわめて精度の高いCG映像が立体的に描き出すミイラの体内、骨格などを内部に入り込んでいくような視点で探っていくところや当時の生活ぶりを再現した映像は画期的なもので、ミイラという歴史的遺品を物体ではなく生きて生活していた人間として見る者の脳裏にイメージさせることに成功している。
●感動を呼ぶ演出
従来の古代エジプトやミイラを扱った展示会と異なるのは、古代のある人物に焦点を当てて、その生活や取り巻く家族、当時の世相や社会階級など、3000年の時を越えて個人にまつわる情報を3D映像コンテンツとしてリアルに再現することに成功したことだろう。
今回の展示会の主人公とも言うべき、ネスペルエンネブウという人物が富裕層に属する神官であり当時の彼の仕事内容などを、ミイラを包んだ棺(カルトナージュ棺)に描かれた絵画やそのデザインによって3000年の時空を越えて私たちに教えてくれる。
ひとくちに古代エジプトと言っても、ミイラが権威の象徴として王族だけに許された埋葬システムであった時代と異なり、ネスペルエンネブウの時代には一部の権力者の独占物ではなくなっていたという。この時代には専門のミイラ職人が存在し、ミイラを作るプロセスや仕上がりのレベルも故人もしくは遺族の経済力により大きく左右されたという。
つまり自由にお金をかけられる富裕層はミイラも最高の技術と素材により、豪華で繊細な美術工芸品のような仕上がりのものを手に入れることが可能だった。
ネスペルエンネブウは裕福だったので当時の高価なプロセスによって作られた、贅沢なミイラとして現代に残されたのだという。
●130点の貴重な展示物
3D映像シアターをあとにして展示コーナーへ歩を進めるとそこには約130点にも及ぶ貴重な品々が並んでいる。
すでにシアター体験によってミイラを身近に感じることのできるようになった来場客は、目の前の展示物を見ながら3000年前の暮らしについて思いをはせることができる。
映像で見た、ネスペルエンネブウの木棺、カルトナージュ棺、宝飾品の数々、副葬品として埋葬された動物のミイラ(猫、魚、朱鷺、隼など)。
非常に興味の尽きない貴重な品々が私たちの目の前で3000年前の古代エジプトの息吹を伝えてくれる。
●大英博物館という人気ブランド
世界最大の博物館の一つで700万点以上の収蔵を誇る大英博物館はきわめて貴重な常設展示品を所有すると同時に、世界各地の博物館と連携した巡回イベントとして企画展を行っている。
とりわけ古代エジプトやミイラを扱ったイベントは世界中で人気が高いものであると同時に、大英博物館や欧米巡回で高い人気を集めた本展は、従来のエジプト展とは異なり、包帯をほどかずにミイラの中を見るという、考古学と最新テクノロジーの融合の結果生まれた新しい形の展覧会であるがゆえに古代エジプトファンのみならず多くの人々にアピールする魅力を備えた展示会といえよう。
そして今回のミイラ展におけるメインコンテンツ、3D映像を採用した考案者は古代エジプト・スーダン部副部長のジョン・テイラーさん。
この企画を思いついたときのエピソードが主催者の朝日新聞社のウェブサイト「asahi.com」に次のように掲載されている。
『着想は近所づきあいのランチがきっかけだった。相手は最先端コンピューター企業の関係者。ニーズに合わせて3D映像を制作している。後日、デモ映像を見せてもらった。古い建築物や人体の中身を探検するような映像を目にした時、「ミイラにも使える!」。頭の中がパッと明るくなった。ミイラ研究の悩みは、包帯を解くと元に戻せない点にある。この技術なら棺(ひつぎ)を開けなくても、内部を手に取るように見ることができる。』
この企画展は2004年の大英博の特別展で1年以上のロングランとなり、以来世界各地を巡業して日本にやってきた。東京での開催は2月18日で終了し、3月17日から神戸で3ヶ月間の会期で開催される。
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©The Trustees of the British Museum 2007. All rights reserved/画像提供:SGI
《関連のサイト》
「asahi.com」 http://www.asahi.com/miira/index.html
「日本SGI株式会社」 http://www.sgi.co.jp/events/2006/mummy/
※ミイラと古代エジプト展は以下のスケジュールで神戸にて開催されます。
《神戸会場概要》
◎会期:2007年3月17日(土)~6月17日(日)
◎会場:神戸市立博物館(神戸市中央区京町24番地)
◎お問い合わせ:神戸市立博物館 078-391-0035
◎主催:神戸市立博物館、大英博物館、朝日新聞社、朝日放送
◎技術協力:日本SGI