| サイト内検索 |
栗原 毅
電通MS事業局スペースブランディング室プロジェクトディレクター
マーケティング局、メディア開発局を経て1989年~1994年電通ドイツ出向。商業放送衛星計画作成に参加。
1998年~2001年ハノーバー万博MSOGmbH出向。同万博事業計画作成に参加。
2001年イベントスペース開発局。来場者の心理変化を指標としたイベント効果測定手法の開発に参加、現在も同作業を継続中。
共著「デジタル集客術」同友館 「イベント学のすすめ」ぎょうせい
ランク付けがはやっています。ミシュランの格付け本はひと時の話題をまきましたが、レストランの格付けはいまや定番になっています。ちょっと気がきいた店には必ず「XX番組で第XX位となりました」などの箔付けがごく当たり前に掲げられています。 高校・大学や企業の人気ランクはいうまでもなく、温泉や街角の順位付け番組、大きいものでは種々の経済指標や日本経済の格付けまで、いたるところで順位付けが目につきます。「安心できる日本の病院50」や「彼女が嫌う男のタイプワースト10」などというのもありました。このごろよく耳にするXX検定 というものもランク付けのひとつですね。
ランキングの大衆化は江戸時代の相撲番付表を嚆矢とするそうです。「XX山が@@関より下にいるのはおかしい」「いや先場所の引き技の多さを考えるとこのくらいが実力だ」などなど、話に花をさかせている情景が目に浮かびます。
きっと私たちは昔から格付けが好きな民族なのでしょう。スーパーや家電店の店頭でもまず「売れ筋ランキング」を見て、上位にあるものを買ってしまう - そんなこともよくありそうです。
ランキングは、自分が他者と比べてどこにいるのかを簡単に教えてくれる便利な数字です。確かに評価とは相対的なものですから、他者と比べるのはまっとうな考え方でしょう。学生がテストの順位を比較するのと同じです。
展示会の効果についても、専門調査会社のランキングを利用して評価しようとする流れがあります。会場内の印象度1位、とか総合評価XX位、など、いろいろな指標が提供されています。
これに異を唱えるものではありませんが、ひとつ言っておかねばならぬことがあります。
出展意図と外部評価
私が来場者調査でいつも念頭においていることは、私たちの測定結果は単なる数字にすぎず、出展社の目的と照らし合わせて初めて意味を持つのだ、という原則です。
展示会は数多くの目的を持っています。来場者とのコミュニケーションはそのひとつに過ぎません。商品への理解を深めてもらいたい場合と企業イメージアップを図りたい時とでは出展方法や効果指標は異なってくるでしょう。
効果測定はつねにカスタム作業なのです。効果測定は、出展意図との対照作業を欠いては意味を持ち得ません。目的と照らし合わせて考えるからこそ、失敗や成功の判断が展示の知恵とつながり、次の企画や意匠の方針にも役立つわけです。
外部のランキング指標は、このように目的がはっきりしている場合は、その達成度を判定する鏡としておおいに役立つでしょう。
しかし目的と離れてランキングが一人歩きすると、本末転倒の危険があるのです。
ランキングの一人歩き
ランクは専門調査会社の商品だけに、よく整理されてわかりやすい資料になって提出されます。使いやすいので、出展社の社内稟議や他の部署説得の際に重宝されます。使われているうちにいつのまにか出展目的とすりかわり、ランクが目的のように使われ始めてしまう。カッコーに托卵されたモズのように、「他人が作った」ランキングを本来の目的と混同するようになってしまうのです。
出展目的がはっきりしていないまま外部のランクを使用し続けていると、合意形成過程でこういうことが起こりがちです。
「次の展示会ではXXXの人気第1位を目指す!」
こんなちょっと妙な本末転倒が実際に行われているところがあるのです。
******
評価するという営みは、自己と他者を比べて相対的な「立ち位置」を把握する作業です。従って判定の指標はある程度の客観性を要求されます。その限りでは、判断指標は外部から導入されるべきかもしれません。
しかし自分自身の判定基準が不明確な場合、外部指標は有害なものになりかねません。判断を外にゆだねる危険な思考停止状態がごく当然に思えるようになる - これは歴史の随所で見られることですが、似たようなことが展示会効果測定というささやかな作業の中でも起こりうるのです。
外部の評価は内部の評価があって初めていきるもの。「天は自ら助くるものを助く」。この古い言葉を肝に銘じたいものです。