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専門学校の卒業制作で開催するコンサート
~外部委託でチケットを販売したり、広報のためにポケットティッシュを配布したりするなどの学校主催のイベント~

 Y舞台芸術専門学校は、卒業制作として毎年本格的なコンサートを行うことで有名である。2年生の小山田香織は、舞台美術を担当することになっていた。

「君のお兄さんにコンサートに出演してもらえないかなあ?」、ある日、卒業制作運営本部のメンバー達は、少しおどおどと香織にこう尋ねた。実は香織の兄である小山田正雄は、先月ハンガリーの国際音楽コンクールのチェロ部門で見事に優勝し、にわかに脚光を浴びている音楽家だった。

 「でも、今年はチャンシーってことで決定したじゃない。第一、兄貴はクラシックだよ……」、香織は驚いた顔で皆に聞いた。

 チャンシーは、昨年デビューしたばかりのロックバンドであったが、デビュー前からライブハウスの活動で長いキャリアを持つ実力派で、コンサートの出演者として先週から連絡を取り合っていた。

 「そうだけど、コラボできたらと考えてるんだよ。今、話題の人だし、第一、客層が広がるだろ?」、皆口々に、香織を説得した。チャンシー側にも打診をしたところ、もし時の人である小山田正雄と一緒に演奏できるならば、とても光栄だと言ってくれたうえ、一緒に演奏できるなら、自分たちの曲にチェロ用のパートを書き起こしたいとまで言っているという。

 その夜、香織は食卓で兄に恐る恐る聞いてみると、妹のためならと、なんとかスケジュールを調整して出演してくれることになった。

コラボコンサートのポスターを掲示したもとでチラシ入りポケットティッシュを配布している。

 小山田正雄とチャンシーのコラボに、舞台芸術運営学科は多いに盛り上がった。広報担当者は、作りかけのポスターを変更し、チャンシーと小山田正雄の写真が同じ大きさで掲載されたデザインに変更した。

 また、チラシ入りのポケットティッシュを作り、学校近くの主要駅前や路上で配布するなど、例年にない活動も追加した。

 指導教員たちも小山田正雄が出演してくれるなら本格的なコンサートにしようと、チケット会社にコンビニやWebで販売をお願いするように指導した。学校側も大変協力的で、すぐにWebに氏名や住所などの必要条件を入力するだけでチケットを購入できるようにした。料金は前売5,000円、当日5,500円。販売目標は会場の席数2,000枚であったが、小山田正雄のネームバリューが功を奏し、チケット会社に委託した1,200枚は即日完売。学校のWebで販売した800枚も3日で終了した。香織もコンサートが近づくにつれて、友人や親戚からチケットが余っていないかどうかの問い合わせを何件も受けた。

 コンサート当日。香織は朝早く、会場にドラゴンのオブジェを運び込んだ。チャンシーの代表作「dragon at eclipse」を演奏するときに、ステージのバックで羽ばたかせ、風を起こす演出を考えたのだ。

 その設置が終わっても、まだミキシング担当の学生は録音機器を真剣に調整していた。このコラボは、自分たちの卒業制作のCDになる。その出来の善し悪しが自分のミキシング技術に左右されると思うと、気合いも入るというものだ。

 午後3時をまわって舞台準備が終わった頃、舞台設営班の学生には1つずつ拡声器が配られた。これから皆で外に出て、拡声器で駅から会場までの観客誘導を行うことになっていた。“いよいよ本番!”、香織はまるで自分が演奏するかのように、ドキドキしていた。

小山田正雄とチャンシーとのコラボ演奏

 演奏は滞りなく終了した。開催直前に音合わせをしただけだったが、小山田正雄はまるで昔からずっとチャンシーのメンバーだったかのような、すばらしいコラボを演奏した。ドラゴンの仕掛けやミキシングもうまくいった。収支も十分に見合ったものとなり、皆が満足のいくコンサートとなった。

イラスト:鈴木純子