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【第10話】ステージ研究(2) 来場者からの評価

栗原 毅

電通MS事業局スペースブランディング室プロジェクトディレクター
マーケティング局、メディア開発局を経て1989年~1994年電通ドイツ出向。商業放送衛星計画作成に参加。
1998年~2001年ハノーバー万博MSOGmbH出向。同万博事業計画作成に参加。
2001年イベントスペース開発局。来場者の心理変化を指標としたイベント効果測定手法の開発に参加、現在も同作業を継続中。

共著「デジタル集客術」同友館 「イベント学のすすめ」ぎょうせい

【 展示会の最新事情 】

今回は「ステージが良かった」という回答が多かったブースの例をご紹介して、ステージへの評価と展示目的との関係などについてお話しましょう。

「良かった」ステージ 注1
私たちの調査ではステージに関わる項目を注目度(目立ったステージ)・接触度(よく見られたステージ)・伝達情報評価(内容が良かったステージ)・伝達意匠評価(演出が良かったステージ)の4種類に分けて調べています。
2003年から2006年までのケース中、それぞれの項目で評価が高いものを上げると以下のようになります:

目立ったステージ:
 カメラ・ファッションショー
58%
 手品 
54%
 フラメンコショー
54%
 ロープパフォーマー
51%
 ロボットのパフォーマンス
45%
 
良く見られたステージ:
 ソフトウェアの使い方
71%
 未来の車映像ショー
64%
 演奏ロボットのショー
62%
 ゲーム機の紹介
61%
 手品
61%
 
伝達情報内容への評価が高いステージ:
 ソフトウェアの使い方
25%
 ソフトウエアの使い方
24%
 PC部品の新商品説明
23%
 企業内ネットワーク機器説明
23%
 PCソフトウェア説明
23%
 
演出などのやりかたへの評価が高いステージ:
 未来の車映像ショー
31%
 アカペラシンガーの演奏
24%
 フラメンコショー
23%
 ロボットのパフォーマンス
23%
 アクロバットダンス 
23%


二つのタイプ:注目型と伝達型

上に挙げたものはベスト5ですが、ここだけ見てもステージ評価の全体的な傾向がわかります。
目立つステージは演出への評価が高いが、必ずしもよく見られてはいない。また情報内容への評価も高くない。
逆に、内容評価が高いステージは、あまり目立たない説明型のステージが多いのです。
 前者は注目重視型とでもいえるもの。できる限り目立って、来場者の注目を集めようとする姿勢でしつらわれたステージです。このタイプはエンターテインメント性を強化しているために、演出への評価でも上位に上がってきていることが多いのでしょう。
 これに対して、もうひとつのタイプは伝達型とでも名づけられます。注目度や演出方法よりも、提供情報自体に重きを置いたステージです。

また、これらのタイプはどうやら重複していない。「目立って面白い」ステージタイプと「地味だが中身が良い」ステージと、かなりはっきりと2種類に分けられるようです。
 これは「おもしろい」か「ためになる」か、どちらかのステージは存在するが、「おもしろくてためになる」ステージはなかなか実現しにくいということを表しているように見えます。
つまり、ステージでは「惹きつけ・楽しませること」と「情報を提供して持ち帰ってもらうこと」の両立が難しいということです。これについてはステージ研究稿の最後に論じたいと思います。


ステージ評価の特徴:商品や企業とのつながりの低さ
次に、ステージへの評価が商品や企業イメージとどうかかわっているかを見ていきましょう。
ここでもちょっと悩ましい問題があるのです;

それはステージ評価の孤立性、とでもいえるような傾向で、ステージへの評価が高いからといって、商品や企業イメージがそれに応じて上昇するかというと、そうでもないのです。
先にあげたステージ評価の高いケースでも、「それだけ」で終わってしまっている場合がかなり多い。むしろステージのインパクトが大きいと「ココロの次の段階」に進みづらいような傾向が見て取れるのです。

 この点をもう少し調べるために、ちょっと統計学的な分析を試みました。 ブース要素の中から「展示商品への心理変化」と「企業イメージ変化」を目的変数として設定して、この二つに対して影響を与えている展示要素は何かという相関関係を調べたのです。
すると、ステージはこれらの「目的」との相関性がかなり稀薄だったのです。ステージ評価が高くても、企業や商品に対してのイメージや理解が上昇するとはいえないという結果でした。注2
中には ステージの評価が企業イメージのある部分とが逆相関を示すものもありました。つまり、ステージのインパクトが強すぎると、却って企業イメージが損なわれることもあるということです。

注1 「良かった」とか、「満足だったか」など、アンケート調査では対象者に心の変化度合いを直接尋ねることがよくあります。「とてもよかった」「ややよかった」など。
 これは厳密に言うなら心理変化の基準軸を対象者自身の主観に委ねているわけで、厳密にいうと方法論的に少々怪しげなところがあります。これを補うために数多くのサンプルを集め、個人の感覚差を捨象して、統計的に処理することで客観性を確保しようとするわけです。
 
注2 むしろ、商品理解や企業イメージの上昇に対しては、説明員の態度や商品知識など、ほかの機能のほうが影響力が強いようにも思えます。これについては別の機会に論じたいと思っています。
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ステージのインパクトは強力です。強力なだけに、誘因と情報提供のどちらかに主眼をおくかをはっきり設定しておくことが重要でしょう。
また、ステージの力だけでは来場者のココロと企業や商品とを深く結びつけることが難しいという点も考えておくべきだと思います。

 次回は展示会というメディアの中でステージをどう位置づけるかについて、もう少し考えていきます。