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【第9話】ステージ研究(1) 分類

栗原 毅

電通MS事業局スペースブランディング室プロジェクトディレクター
マーケティング局、メディア開発局を経て1989年~1994年電通ドイツ出向。商業放送衛星計画作成に参加。
1998年~2001年ハノーバー万博MSOGmbH出向。同万博事業計画作成に参加。
2001年イベントスペース開発局。来場者の心理変化を指標としたイベント効果測定手法の開発に参加、現在も同作業を継続中。

共著「デジタル集客術」同友館 「イベント学のすすめ」ぎょうせい

【 展示会の最新事情 】


第9話 「ステージ」研究 (1)分類
今回から数回ほどかけて、展示会での「ステージ」についてこれまでにわかってきたことをまとめてみようと思います。

ステージは「企画者の知恵のみせどころ」、展示会の目玉としておなじみです。来場者に足をとめて見てもらおうと、音楽やパフォーマンスなど趣向を凝らして繰り広げられます。
では展示会でのステージは、訪れる人の心にはどう映っているのでしょうか。
一回目は手始めに、ステージの実態を見ていきます。私たちの観察データを基に、ブース内での位置や運営方法、内容などによって分類してみました。


定義
分類するというからには、いささかなりとも対象の定義づけが必要でしょう。
ちょっと無理やりですが 一応ステージの定義注1をしておきます。

定義の定義は 「類+種差」、つまり 「似たもの同士を対置させて違いを際立たせ、輪郭をはっきりさせること」だといいます。
さて展示会でステージに似ているものはセミナーと呼ばれているものでしょう。そこで、ステージとセミナーの違いを示すことで 私たちの「ステージ定義」としたいと思います;

[展示会のステージとは]
専門家以外の人間(司会者、ダンサーなど)が、伝達したい情報やイメージを伝えること。

[セミナーとは] 
専門家自身が伝達したい情報を伝えること。

情報伝達の方法に気を配り、仲介役にコミュニケーションの専門家を配するのがステージ。伝達情報の正確さを重んじて、専門家が直接伝達するのがセミナー、としたわけです。注2


分類結果
さて我々の手元にある200ほどのブース観察データを、ステージの手法という観点から細かく眺めました。すると、いくつかパターンが見えてきたように思います。

(1)ステージの有無:「まったくステージがない」ブースは手元のケースの中ではわずか2例でした。このうち1例では、ステージという形はとらないものの、抽選会や飲食物提供は行っており、そのためのカウンターと担当する女性スタッフは設営されていました。

(2)位置:「ステージがブース内のどこにあるか」です。
一番多い(6割ほど)のは、ブースの角の目立つ場所にステージを設定するパターンでした。ステージの裏には展示スペースを設け、来場者の足を中に向けるよう努力しているケースが多く見られます。



次に、ブースの中央にステージを設ける例。これは展示したい商品などがひとつだけの場合、あるいは統合してひとつのシナリオで説明しようとする場合です。2割程度がこれにあたります。どれも相当巨大なブースです。



次に、数は多くないのですが、ステージをブースの奥に配置しているケースがあります。どの展示会でもこの配置を続けている出展社もあります。ステージ機能についての考え方などを伺ってみたいところです。



(3)座席:いわゆるBtoB型展示会とBtoC型で、座席への配慮はかなり違うようです。BtoB型では全員に着席してもらうのが一般的。座席数は20から30が最頻域(完全に囲ってしまうシアター形式を除く)。 100が最多席数でした。
一方でBtoC型では立ち見にする例が多く見られます。しかし例外も多く、一概には言えません。

(4)ステージの長さ:ひとつひとつを正確に計測したわけではありませんが、ほとんどが大体12分くらいから15分までです。 最も短いものが7分 、長いものでは35分という例がありました。最長ケースは同一ステージ上で、3つのチームが入れ替って登場するというものでしたが、見終わったあとはさすがに疲労感を覚えたものです。

(5)頻度:ステージ頻度はおおむね一時間に1回から3回程度。ステージをどのくらいの回数行うかは相当慎重に考えられているようです。頻度が多いとチームを複数用意せねばならず費用がかさむし、他の展示接触への誘導がおろそかになる。一方でステージ間隔を広げるとせっかくの設備が遊んでしまう。あいだをとった一般的な適正値が1~3回/時、というところでしょう。

(6)内容での分類:ステージ上での情報伝達のやりかたでもいくつかに分類できます。

A 企業理念型 
 企業理念や姿勢を示す映像を素材にして、司会役がこれを解説していきます。映像には社長が登場することもあります。あまり面白いとはいえないので、足を止めて見入るような光景も見られない地味なステージです。映像だけをステージの合間に流しているところもあります。

B商品紹介型 
 詳しい商品説明ステージ。最も多いタイプです。出展社にとっては、自社の情報を整理編集するだけなのでてっとり早いやりかたなのでしょう。
しかし商品情報だけでは見る側にとってたいくつになりがち。それを自覚しているのでしょう、このタイプには「最後まで見てくれたらいいことがありますよ」と、「お楽しみ抽選会」企画の類が最も多く見られます。

C使うとどうなる型
 通信インフラ系など、商品の具体化が難しい場合に使われるやりかた。商品の説明は省いて、XXを使うとあなたの生活はこうなる、という効能をアピールします。ストーリー仕立てにして、映像を多用することが多いようです。

D イメージ型
 消費者が機能をよくわかっている商品や、情報伝達よりイメージ訴求のほうが効果的な商品では、ときおり華麗なパフォーマンスを見ることができます。
ダンサー、手品師やサーカスなどはもちろん、プールや人間の空中遊泳などのおおわざが登場したこともあります。
 
E 問題提起型
 今ある不便さや課題を提示して、それに共感してもらうまでだけをステージが受け持つやりかた。「いま社会(生活・仕事)ではこんな課題・問題がありますね」と提示、同調してもらうところでステージは終了。「詳しくは説明員がお答えします」と他コーナーに誘導します。
ステージと展示コーナー・説明員などの他機能単位との連携プレー。理想的といえる展示要素の有機的結合事例なのですが、我々の調査では1例のみでした。費用をかけて設営するステージを、課題提起だけで終わらせてしまうことには抵抗が大きいこともむべなるかなとは思います。

  
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我々の調査対象、150㎡以上のブースのほとんどがステージを持っていました。ここを中核として、来場者をひきつけるために大きな知恵がしぼられていることも明らかです。
 では 来場者のほうはこれをどうみているか。ステージが来場者にどううけとめられているかを次回からお話していきたいと思います。


注1 本当は、こういう言葉は定義をあれこれ考えてもあまり意味がないのでしょう。
我々の調査でも、対象者に「ステージの定義とはこれこれですが・・・」などと確かめてはいません。またこのほかにも私たちの周りには定義などはっきりしないまま使われているコトバたちがたくさんあります。「ブランド」「コンセプト」「哲学」「マーケティング」(・・・もしかしたら「イベント」も・・・?)、みな「なんとなくお互いわかっている」だけで使われています。あいまいさを平気で受け入れているところが日本的ですね。

注2 しかし展示会をひとめながめれば「セミナー・ステージ」だとか「ステージショー」など、ややこしい表現が氾濫しています。我々の「定義」も一応の目安程度にお考えください。