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【第1話】14分の邂逅

栗原 毅

電通MS事業局スペースブランディング室プロジェクトディレクター
マーケティング局、メディア開発局を経て1989年~1994年電通ドイツ出向。商業放送衛星計画作成に参加。
1998年~2001年ハノーバー万博MSOGmbH出向。同万博事業計画作成に参加。
2001年イベントスペース開発局。来場者の心理変化を指標としたイベント効果測定手法の開発に参加、現在も同作業を継続中。

共著「デジタル集客術」同友館 「イベント学のすすめ」ぎょうせい

【 展示会の最新事情 】

「イベントの効果を来場者のココロの変化ではかる」のが私たちのやり方だといいましたが、心理変化などというややこしい話題に入る前に、はっきりした数値が出ている来場者の行動についていくつかお話したいとおもいます。

 今回は、ブース内の滞在時間についてお話しましょう。

 出展者側は、大きなお金と手間をかけてブースを用意するのですから、来場者には、ブースの中にあるものすべてを見ていってもらいたい。そのためにさまざまな知恵を集めて、ヒトの足を留めるための工夫をこらします。
その意味で、訪れた人がブースの中に留っている時間は、そのブースの成否を判定する指標の一つとなり得るでしょう。
展示する側と受け取る側が切り結ぶ、決闘の時間。私たちはこれを「ブース滞在時間」として調べています。

 2003年から2005年にかけての調査では 平均滞在時間14.1分という結果*1が出ています。平均的来訪者は、あるブースを訪れてから立ち去るまで、14分間ほど中を歩き巡る。
みなさんはこの長さをどうお感じになるでしょうか。長いか短いか。

 伝える側からは「えっ?たったの14分?」という感想をしばしば聞きます。ブースを作る側としては、商品や会社の情報すべてを伝えたい。だからブースの中には情報が満載です。それを全部見てくれて、わかってくれるには、14分ではいかにも短い、というのが率直な気持ちでしょう。
 けれど、出展者側の熱い思いとは無関係に、来場者はひらひらとブース内を遊弋しているようです。我々の思いはちゃんと伝わっているのでしょうか・・・

*1これは来場者が自己申告したアンケート値。実時間を測って比較した結果では、実時間はその7割程度と推測できます。 *1対象ブースの大きさについて。私たちの調査対象は、面積が180㎡以上のやや大き目のブースです。これくらいの規模になると、ステージやセミナー会場が備わり、デザイナーや広告会社の知恵・展示意匠がものをいう余地があります。BtoC要素のあるブースといってもいいでしょう。(商談のみを目的とした、あまり大きな面積を必要としないBtoB型の出展の場合は違う結果が出ることと思います。


ステージの長さと滞在時間
 別なデータをあげてみましょう。各ブースでは、プレゼンテーションステージやセミナーが頻繁に行われています。展示会の種類や企業の考えによって性格や長さはさまざまですが、このステージの長さの平均が大体10数分なのです。
ステージの長さが10数分で、来場者がブースにいる総時間が14分。引き算をすれば、展示を見ている時間がないことになってしまう。ということは、どうやら実際にはステージをきちんと全部見ている人は少数派なのではないか、と考えられるのです*2。
 「おや、なにかやってるな、ちょっと見ていこう。・・・ああ、自分とはあまり関係ないな、他を見に行くとするか。」 このような「ちょっと見型ステージ見物」の様子が浮かんできます。

*2これは、情報の伝達効率という点では大きな問題で、ステージをどう仕立てるかという根本課題を提起するデータだと考えています。私達の調査からは、ステージは誘引・伝達・介助の三つの機能を持つという仮説がでてきていますが、これについては後に詳しくお話したいと思います。


大きさによらない滞在時間
 ブース滞在時間で面白いことは、必ずしも面積に比例して時間が延びないことです。モーターショーのような何千㎡もある巨大ブースと IT展示会での150㎡程度の中規模ブースとで、滞在時間にあまり差がない。

 大きいブースでも小さいブースでもいてくれる時間は変わらない。巨大ブース関係者からは「小規模ブースと同じとはなにごとか」という異議が聞こえてきそうな結果です。なぜなのでしょうか。

 展示商品・意匠の違いや来場者属性など、厳密に考えなければならない点はいろいろありますが、私たちはむしろ、来場者の気持ちを推測することで答えを見つけようとしています。つまり、ヒトが展示会ブースのようなものの枠のなかで自由にふるまうとき、「飽きずにいる」限界のようなものがある。これが、現代日本人の場合14分前後(実時間10分)にあるのではないかと考えるのですが、まだまだ想像の域を出ません。同種の実験や参考文献などがあれば知りたいところです。

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14分をいかに有効活用するか、あるいはどうやって14分を20分に伸ばしていくか、制作者の知恵の絞りどころでしょう。