−コラム イベントあれこれ
人々を暖かく包む―福祉・環境・交流イベント 第2回


日系ブラジル・ペルー高校生による
ミューラル・プロジェクト

(2004日本イベント大賞応募作品 クリックで送ってください)
Muralはコミュニティの「困難」「問題」や「希望」「誇り」などのメッセージをこめて、地域の人々と共に公共空間に絵を描く表現芸術です。(日本イベント大賞応募資料より)
●メキシコ壁画運動

 メキシコ革命たけなわの1922年、画家デイエゴ・ロベラ、ホセ・クレメンテ・オロスコなど3人の画家によって「メキシコ壁画運動」が始まった。
 公共空間の壁面に人間の総てを描いて民衆に強烈なメッセージを投げかける壮大な壁画の叙事詩は、映画監督のエイゼンシュテタインや藤田嗣治、岡本太郎、北川民治、イサムノグチなどにも鮮烈な影響を与えたといわれている。人々を勇気づけ社会を動かしたこの試みは、中南米各地で「歴史や文化を共有する手段」として広がっていった。

上 完成したミューラル 長さは11メートル 日本イベント大賞応募資料より

右 2004日本イベント大賞表彰式で特別賞「国際交流奨励賞」を受賞した 特定非営利活動法人 浜松NPOネットワークセンターのみなさん
●不登校の児童たち

 静岡県浜松市の総人口は約60万人、外国人登録者の総人口に占める比率は平成3年に約1.5%であったものが10年後の平成13年には3.3%に増加した。その過半数をブラジル・ペルー人が占め、世帯数も約6000にのぼっている。雇用機会が多いうえに気候が温暖なこともあって家族ぐるみ移住するケースが増え、日系コミュニティも形成され、ポルトガル語新聞も発行されている。人々の定住志向が強まるにつれて生活習慣や文化の違い、医療や教育上の課題が無視できなくなってきた。

 「浜松NPOネットワークセンター(ここでは浜松NPOと記す)」は平成9年に設立されて以来、地域の問題解決に取り組んできた。
 平成14年には「外国人教育支援全国交流会」を開催して全国35団体120人とホットな討論が行われた。浜松にいる外国人の平均居住年数が10年を超え、学齢期の子供たちの不登校問題が深刻化している時期であった。
 交流会での成果の一つが「高校進学の道を広げ、将来の展望が見えることは小・中学校で壁に悩む子どもたちの励みになる」というコンセプトであり、その提案を具体化したのが「Mural
Project」である。

写真
外国人教育支援全国交流会
右 ポルトガル語でよびかけたチラシ
  浜松NPOネットワークセンター N-Pocket
●あなたは一人じゃない 学ぶことは未来のために

 浜松NPOはそれまで地域で築いた人的ネットワークを生かして、すべてのプロセスをプロデュースした。日系ブラジル・ペルー人高校生9人が日本人高校生の支援をうけてメッセージを創造した。「あきらめないで あなたは一人じゃない 学ぶことは未来のために 夢をかなえよう」

 平成14年夏には北山浜松市長と懇談、4人の高校生がサンフランシスコを訪れてミューラルを学んだ。県立浜松江之島高校の鈴木雅道教諭と美術部員、American Friends Service Committeeのケンダル・オゥ女史からは芸術面での協力と支援を得られた。下絵に色を入れるコミュニティ・ペインティング・ディでは延べ3日間に160人の市民が参加し、色を塗りながら課題を共有した。

 長さ11メートルの巨大な壁画は完成後、静岡文化芸術大学の学園祭や浜松市内の公共施設で展示されたほか、国立民俗学博物館の巡回企画展示で紹介された。国体会場のサンバ・アトラクションでは天皇皇后両陛下の前で披露された。
 
 ここに至るまでのプロセスと成果は高く評価され、2004年日本イベント大賞では特別賞「国際交流奨励賞」に輝いた。


ミューラルの下絵と
高校生たちめ市民の創造的なコラボレーション

 Mural Project がもたらした最大の成果はおそらく、友情を育みながら若者のリーダーへと成長していった高校生たち自身であるに違いない。
 多文化共生の時代を牽引する優れた人材がこのようにして巣立っていく。
 それは日本の未来にとっての大きな希望なのである。(平成17年6月三輪祐児)

写真は2004日本イベント大賞応募作品および 浜松NPOネットワークセンターのホームページhttp://www.n-pocket.jp/から使用しました。
主催:浜松NPOネットワークセンター(N-Pocket
協働団体:American Friends Service Committee(AFSC(米国のNGO
支援団体:日米コミュニティー・エクスチェンジ(JUCEE)
協力:静岡県立浜松江之島高校、静岡文化芸術大学
助成:JUCEE日本財団静岡県国際交流協会
協賛:ぺんてる、リキテックス/バニーコルアート、クサカベ、ターナー、ターレンスジャパン
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